ぼくは釘を打ちません

厚紙で作った立体の下絵
厚紙で作った立体の下絵

 ラインテープとカッティングシートで描き始めたのは、25年前です。最近は、よりさわれる作品を作るために釘を多用しています。釘はゴツゴツしていて手ざわりが悪いと思われがちですが、連続して、密集して打つことで何ともなめらかなラインや面も表現できます。

  ラインテープとカッティングシートは自分で切ったり貼ったりして最後まで独力で扱えます。しかし木に釘を打っていく作業はぼくには無理です。でも思うように作りたい!  ならば優秀なスタッフに作りたいものを伝えてチームとして作業すればいいではないか。そんなことを考え実行したのが昨年の東京都現代美術館で展示した作品でした。

 最初は言葉で伝えようとしたりラインテープで下書きを描いたりしていましたが、なかなか思うように伝わらない。それで厚紙で模型を作るようになりました。これなら高さも表せるし、釘の傾きも指示できます。ボンドで貼りつけようとすると、手にボンドがこびりついて指先の感覚があいまいになります。今使っているのは、細い両面テープです。こんな感じで工作をするのがぼくの仕事です。そして出来上がった模型に、作業の指示を書き入れてもらいます。そしてひたすらスタッフが釘を打ち続けます。

 コロナで集まって作業出来ない間は、一人のスタッフに作業が集中し、そのスタッフが肘関節の腱鞘炎になってしまいました。6月からは、これまで通り3名が集まれるようになり、何とか痛みも軽減してきたようでほっとしています。