美術館の建築現場に入る

足場の階段をおりる光島
足場の階段をおりる光島

 8月2日から2泊3日で、長野下見第2回目を決行しました。最終日の午前中には建築中の信濃美術館に入って、清水建設の杉山さんに現場を案内していただき、「ふれラボ」(さわって楽しめる作品を集めたコーナー)の大きさや、壁面のつながりなどを確認しました。

 
 昨年訪れた時は、まだ床などもできていなかったので、建築模型をさわっての確認でした。建築模型もそれはそれで模型好きのぼくの心をくすぐるものでした。1階から2階部分を取りはずしたり、屋根を外して中をさわったり、美術館の全体像もある程度理解できました。ちょうどぼくが釘作品の下描き(厚紙での立体模型)を作りながら作品にしていくのと同じようなことなんだろうな、などと思いながらさわっていました。

 ところが今回は、工事の音が響き渡る中を歩いたり、搬入用の大きなエレベーターに乗ったりして、リアルに美術館を体験することができたのです。そして最後には、屋上部分にも登ることになりました。新しくできる美術館では、この屋上もカフェスペースやくつろぎの空間としても位置づけられていて、重要なスポットになるそうです。

 鉄骨で組まれた足場の狭い急な階段を、手すりを持ちながら一歩一歩進んでいきました。もちろんヘルメットをかぶって、マスクをして、白杖を持ってです。こういう時は、手引きしてもらうより、手すりを頼りに歩くのが一番安全です。足下がふらついたとき、手引きしている人につかまってしまうと共倒れになる可能性があるからです。

 屋上で唯一残念だったのは、高いところから聞こえるはずの周囲のまちの音が、機械音のせいでまったく聞こえなかったことでした。まあ、これは完成してからのお楽しみですね。

 ぼくが、普段まちを歩いていて一番嫌いなのは、工事現場のドリルの音や、大きな機械音です。なぜなら、周りの音がまったく聞こえなくなり、まっすぐ歩いているのかどうかさえ分からなくなって、とても不安な状態になるからです。ちょうど今頃の季節だと、セミの声も街路樹の多いところでは、同じように周りの音がかき消されてしまいます。ミンミンゼミぐらいはまだいいのですが、クマゼミとアブラゼミが合唱したときにはどうしようもありません。

 ところが、今回自分自身が現場の中にいて、しかも同行してくれるスタッフもいるという安心した状態での探検は、とても心地よいものだったのです。上から、左から、右手から、360度いろんな方向からいろんな機械音が聞こえてきます。大きなロボットの体内に入りこんで、自分でロボットを操縦するとこんな感じがするのだろうかと、想像を膨らませてしまいました。

 実は、こういう音を単体で聴くこと自体は好きなんだろうと思います。音楽で言うとノイズ音楽ですね。結構好きなんです。