ハイブリッドな身体表現かも?(前編)

くろさんの顔をさわるみつ(Photo: Toshie Kusamoto)
くろさんの顔をさわるみつ(Photo: Toshie Kusamoto)

 11月14日13時30分より、「Sawa-Tadori オープニング企画② 光島貴之展 ─ side B」の関連イベントとして、黒子沙菜恵さんとのパフォーマンス&ライブペイントが実現しました。以下はその内容をふり返ったものです。

 かっこいいブログタイトルを付けましたが、視覚に障害のある人からの感想だと昼下がりのラジオから聞こえてくる漫才の様だったそうです。動きと共に言葉を発声しようとした「くろみつ」のねらいはまずまず成功していたのかな。

 黒子さん(くろさん、踊る人)とぼく(みつ、触覚の人)との90分はあっと言う間に終わりました。会場には、新たな可動壁を1枚追加。可動壁4枚の周囲を取り囲むようにはりめぐらせた直径9ミリのロープが、ぼくの命綱のはずでした。はじめはこのロープを足裏で確認しながらそろそろと動いていましたが、くろさんが思いのほか声を出してくれるので、その声の方向を確認していれば大丈夫だろうと思い始め、時間とともにロープのことはあまり意識しなくなりました。


 もうひとつぼくが頼りにしていたのは、映像記録などでいつもご協力いただいている小池さんが作ってくれたまちの音です。

 

 パフォーマンスの前々日に下見に来た小池さんに、無理を言って作ってもらいました。まちの音を使って環境音のようなものを、というリクエストに対し、「帰りしに光島さんが道路で信号待ちしてるすがたを横目に見た時、自転車に乗りながら耳の中を光島さんの体の中で味わう音って体にどんなに響いてるのかなどんな感じかなとか思って作ってみました」というメッセージと共に音が送られて来ました。


 この音をiPhoneに仕込み、会場の中央付近にある可動壁の下に置くことで音の目印としていました。それとなく流していたため、あまり気付いてない人も多いかもしれないので、YouTubeのリンク先を紹介しておきます。

 確かにいつも聞いている車の走行音や、自転車、足音、話し声、カラスの鳴き声、自宅の郵便受けを開ける音。そして何より、音響式信号機の音がいつもとは違う感じで聞こえてくるではありませんか。後で小池さんに聞いたら逆回転させた音だとか。あのけたたまし過ぎる音が、なめらかな優しい音になっていました。

 そしていま、そのまちの音をあらためて聞いてみました。ニール・ヤングの曲と合わせて聞くと最高です。風の音もわりと入ってはいるのですが、これは歩いているときじゃなくて自転車で風を受けている雰囲気です。ぼくは自転車に乗ることもできないし、ニール・ヤングをヘッドフォンで聞きながら走ることもできませんが、バーチャルですいすい走りだして気持ちよくなれます。

 さて、ぼくは半透明の防護服をまとい、触覚を遮断した身体として登場。声を頼りにくろさんを捜し当てるという緩やかなスタートです。事前に大まかな流れを言葉でやりとりしただけで、リハーサルは一切なしの即興でした。

 布をかぶったくろさんの顔をさわるという場面が、思ったよりも早くやって来ました。さわった顔の印象をラインテープで描くという展開かと思いきや、別の流れへと動き始めました。これで顔を描かなくてもすむなぁと実はほっとしていたのですが、一番最後にくろさんから顔を描くリクエストが。でもこの続きは長くなるので後編に。